いつ頃からなのか覚えてないけど、子供の頃からバイクに憧れていた。
小学生の頃からか、幼稚園生の頃からか。
仮面ライダーか、キカイダーか、、、キャシャーンか。ヒーローはバイクに乗っていた。
男の子なら、誰でも多少はわかるはず。
近所の年下の子供がポケバイに乗っていた。
家のガレージのシャッターが開くと、そこにポケバイが並んでいたのを見ていた。
本格的にレースに出ていたようだ。
どういうきっかけか忘れたけど、そのお父さんに近所の公園で運転させてもらうことになった。
ギヤチェンジせず、ぐるっと廻っただけだったけど、特別な体験だった。
近所の2つか3つ年下の子が、別世界の人間のように感じた。
中学生の頃に湘南爆走族っていう漫画が流行っていて、
漫画に出てくるバイクにそっくりなカラーリングのバイクが 近所を走っていた。
当時、バイクは不良の乗り物だった。
暴走族も多かったし、世の中ではヒーローの乗り物というイメージではなく、悪モノの乗り物みたいになっていた。
実際、マフラーを改造したり音を大きめにすることも流行っていた。
若者の事故も多かったこともあり、
国の制度としては16歳からバイクの免許が取れるのに、
既にほとんどの高校では基本的に免許はとってはいけないことになっていた。
学校に内緒で免許を取っているのは不良で、免許を取っただけで停学とか退学処分になっていた。
バイクに乗りたいなんて、全く別世界の話のように感じていた。
内緒で原付スクーターくらいは乗ったことがあったような気もするけど・・・
高校を卒業し、実家を離れ大学に入った。
アルバイトをして中型免許を取った。
車の免許より先だった。
一人暮らしをして、生活費は仕送りをしてもらっていたが、
バイクの免許を取るのも、バイクを買うのも、自分で働いたお金で、と、自分の中で決めていた。
大学で何を学ぶか、将来、何の仕事をするか、、、そんなことより、とりあえずバイクに乗りたい。
大学1年生。当時、アルバイト先(飲食店)の先輩がバイク屋さんで働いていた経験のある人で、
とても詳しい人だったので、色々と教えてもらった。
バイクを買うにあたって相談したら、その人の知り合いでちょうど250ccのバイクを売りに出す人がいるとのことで、
見せてもらうと格好も良かったので即決した。
HONDA のJADE。
当時、いわゆるネイキッドブームが来ていた。
カワサキのゼファーがチャンピオン。ホンダが少し遅れてスーパーフォアをだした頃。
車検不要の250ccでは、バリオス、スパーダ、グース、そしジェイド。
ちなみに、ネイキッドブームの少し前はレーサーレプリカモデルがブームだった。
NSR, CBR, FZR, YZR,,,
世代的にはバリバリ伝説の後、峠やサーキットへの憧れはなく、
どちらかというとファッションでバイクを選んだ。
最初のバイクから個人売買で、登録も先輩から教えてもらって自分で行った。
陸運支局の担当者はクソみたいな”お役所仕事”だった。
今の若い人にはわからないかもしれない、”お役所仕事”。
書類の書き方がわからず、受付の人に聞こうとしたら、無視された。
あれ?・・・聞こえなかったかな???と、もう一度大きい声で聞くと、
「チッ」と舌打ちされた。。。。。。
たぶん、40代くらいの女性。
ルーティンで淡々とこなすだけ。時間が来たら終わる。頑張っても頑張らなくても給料は同じ。
余計な説明で仕事のペースを邪魔する素人の相手なんてやるだけ損。
そんなふざけた仕事の態度が当たり前の時代だった。
今は随分と変わった。
これは世間でのお役所仕事の批判の声の高まりであったり、行政であったり。
ちなみに、その少し後に訪れる、まだ社会主義丸出しだった頃の中国でも同様の体験をする。
FUCK!社会主義。
今から思うと、バイクのことは何もわかっていなかったけど、
そんなお役所の不愉快な気持ちなんか吹き飛ぶくらい、バイクを買ったのは嬉しかった。
布団に入れて、一緒に寝たいくらいくらいだった。
機械いじりは何もできず、機能や構造も理解してなかったけど、ずっと眺めていた。
気に入って毎日乗り回していたのだが、そのバイクは半年くらいで盗まれてしまう。。。
ものすごくショックだった。一応、警察にも届けるも、ほぼ出てこないだろう、と。。。
通学やアルバイト先への通勤に不便だったので、すぐに近所のお店でバイクを買った。
もともと、バイクが好き、というだけで、特に何に乗りたいというこだわりもなかったので、
そのお店にあった一番安いのを、、、ということで、オフロードバイクを買った。
13万円だった。
通勤、通学用途で、その移動の機能を果たせれば良いというだけ。
今度は盗まれにくい不人気タイプを、みたいな気持ちもあったと思う。
1年ちょっとしか乗らなかったので、たいして修理や整備をする機会もなかった。
お店にエンジンオイルの交換くらいは持って行ったが。
とにかく機械音痴だったので、そのバイクが空冷なのか水冷なのかも知ったこっちゃないってくらい(笑
社会人になってお金に余裕があればハーレーに乗りたいな、と漠然と思っていた。
そもそも、なぜハーレーか?
なんとなく、格好良い、近所のおじさんが乗っていた、漫画で見た、映画で見た、そのくらい。
特に購入する予定があったわけではない。
でも、当時は中型からの限定解除は一発試験だけで、難しかったから、
時間のある学生の今のうちに大型免許を取ったほうが良いんじゃないかと、と。
そして単純に大型免許を取ったら、大きいバイクに乗りたい、と思った。
ということで、レッドバロンで750ccのバイクを買うことになる。
ホンダのVF750F。VFRの前の型で、その当時も、すでに随分と前に絶版となっていた。確か20万円くらいだった。
その当時はリッターバイクの人気が高まっていたのと、
ネイキッドブームで、古い750ccの値段は暴落していたのだ。
乗って思ったのは、こんなに楽にスピードが出て乗りやすいんだ、と。
でも、重くて面倒だった。
他県に移動することすらほとんどなく、
学校やバイトに行くだけにしては、大きくてマンションの駐輪場から出すことだけでも億劫になった。
でも、なぜか自分にとっては、バイクに乗るという行為が大事だった。
なんか電車に乗りたくなかった。
いわゆる世間に出る前のモラトリアム期間で、
サラリーマンみたいに電車に乗ることが格好悪いと思っていた。
そもそも、バイクって自由への憧れの象徴だった。
現実逃避の道具だったのかもしれない。
世の中は自分を理解してくれなくて、何か違う自分になりたくて、
そんな気持ちをうまく表すこともできず、
バイクに乗る。
しかし750ccは取り回しが不便で、
いつの間にか自由は不自由になっていた。
車検が切れるギリギリまで乗って、レッドバロンに引き取ってもらった。
もともと安いバイクだったけど、買取はほとんどタダだった。
レッドバロンは、自分のところで売ったバイクは必ず引き取るというルールになってるから、
しょうがないから引き取るけどね、みたいな感じだった。
今から思うと、事故ったこともないし、エンジンも調子が良かった。
壊れてないバイクを引き取ってもらうのに無料って、、、
と思うが、当時はそんなものなのかと思ってた。
つい最近、ネットで調べると、いい値段で出回っている。
分からないものだ。
当時は、とにかく情報が無かった。
売る方法もあったのだろうけど、当時は個人売買の方法は知り合いに声をかけるか、雑誌への投稿だった。
そんなの、なんか面倒臭そうだし、時間もかかるだろうと。
ヤフオクどころか、Windows95も出る前で、インターネットなんて言葉も知らなかった。
(インターネット自体はあったが、マニアがやっていただけだった。Yahoo! JAPANもまだ無かった)
750ccを手放してからは、しばらく知り合いから1万円で買ったスクーターのリード90に乗っていた。
物足りなさは感じつつも、とにかく毎日の移動手段としては、十分だった。
忘れていた頃に、ふとバイクで出かけたくなる。
自由を欲しがっているのか、単に旅好きなのか、、、
先祖は遊牧民族なのだろうか、、、
リード90でも、少しは遠出もした。
しかし、壊れてしまって、手放した。
もともと1万円だったのには理由があり、事故車だったのだ。
引き取った時点で少しフレームが歪んでいたので、最初からお金をかけて直す気もなかった。
その後、たまたま近所の人の倉庫で眠っていた原付バイクを譲り受けることになった。
長い間放置されていたバイクで、エンジンもかからなかった。
原付だが、オフロードタイプだった。
それを近所のバイク屋さんに持って行って、「これを直したいんですけど・・・」と相談しに行った。
今から思うと、、、全くあつかましい奴だ(笑
まだ学生でお金がなく、そして、暇だったから。
それにしても直して欲しい、じゃなくて、自分で直したいんだけど・・・って!
店主は呆れつつも、私に教えながら直してくれた。
「自分で直したいなら、こうするんだよ」って。
俺がやると工賃取ることになるから、教えてやるよ、と言いながら。
めちゃくちゃ良い人だった。
これを読んでるあなたが同じことをしても、そんなバイク屋さんに出会うことはないだろう(笑
私はいつの間にかそのお店に入り浸るようになり、
バイクの楽しさを教えてもらい、そこがきっかけでレースにも出て、
そして、最終的にそのバイクで中古のバイクを買った。
今から思っても、理想的なバイク店との出会いではなかったかと思う。
***
バイクに乗る必要がある仕事もあるだろう。
郵便配達とか、警察とか、蕎麦屋の出前とか。
でも、多くの場合、バイクに乗る動機って、何か不安定で、自由とか訳の分からないもので、
格好良いからとか、そんな生活に必要でないもので、
移動手段なら車がいいのに、わざわざ転倒の危険もある乗り物に。
乗ると色んな楽しみがあり、上手に乗るテクニックもあるし、
そしてお金もかかる。
哲学ってほどじゃないが、そんなことをわかってくれる人間味のある店主のところでバイクを買いたい。
***
バイクのメインテナンスマニュアル、みたいな本くらいは買っていた。
サービスマニュアルの存在を知ったのもこの頃だったと思う。
工具も最低限の安物しか持ってなかった。
バイクなんて学校に行って資格を持った専門家しかさわれないというイメージは無くなって行く。
残念ながら、遠くに引っ越すことになり、そのバイク屋さんに行くことはなくなった。
その後もずっとバイクには乗っているが、
何度もヤフオクでバイクを買っている。
馴染みのバイク屋さんが無かったということもあるが、
一番の理由は安いから、だろう。
特に抵抗は無かった。
ところが、知り合いなどにヤフオクでバイクを買ったというと、「大丈夫なの?」
と多くの人から聞かれた。
え?なんで?
もちろん、ハズレを引くことはあると思うが、
中古のバイクを買うのにお店か個人売買かなんて気にしてなかった。
お店で買うバイクだって中古なら100%信用できるなんてことないし、
なんで皆そんなに気になるんだろう?と逆に疑問だった。
そして、動かないバイクを直した(直してもらった)経験から、
自分で直せば良いと思っていたが、ネットの普及により、直し方も調べれば簡単に分かるようになった。
そのうちに工具もそれなりの良いものを揃えて、自分で整備やカスタムをする楽しみを覚えた。
キックも降りない不動車を買ってきて自分で動くようにしたこともある。
自分で分解して組み立ててエンジンがかかった時は、すごく嬉しくて満足感がある。
これも大きなバイクの楽しみ方で、ライダーでそういう楽しみを知らないのは不幸なことだ。
バイク屋に行くのは、ディーラーにパーツを注文しに行く時だけになった。
ヤフオクだけでなく、今ではメルカリでも何でも、インターネットは個人間での取引を容易にした。
ある意味、中古バイクが個人間で取引されるなんて歴史の必然。
そしてまた、これまた必然で、
バイク屋さんが大変になった。
どんどんバイクに乗る人が減ってしまい、若い人はバイクや車に興味を持たなくなり、
中古バイクの売買で得ていた利益も無くなると、
整備だけで儲けを出すってことになるが、
素性のわからないバイクの整備なんて難しいし、面倒なことが多い。
しかも、工賃ってだいたい決まっている。
そのバイク屋さんが慣れた作業であろうが無かろうが工賃は同じ。
そして、バイク屋さんの多くが、ヤフオクを敵対視するようになった。
自分のお店で売ったバイクじゃないと、整備も断るところが増えた。
ヤフオクで買ったものでなくても、自分のところで売ったものじゃないと見ない、と。
BMWを買って、ディーラーに持って行って、それ君、普通に年上の人に対して失礼だよ、という態度を取られた。
長らくバイク店に行ってなかったので、びっくりした。
確かに、ディーラーでしか買わない、
新車しか買わないって人もいる。
ディーラーも、そういう客層としか付き合わない。
あれ?バイクってそんな不自由な乗り物だっけ?
そもそも乗る人が減ってるのに、そんなことでいいの?
でも、バイク屋さんも個人売買を否定することはもう出来ないだろう。
そもそもバイクが売れない時代なので、
逆にヤフオクで買ったバイクでも修理します、というのを前面に出す店も出てきている。
客の側はリスペクトする気持ちが大事。
自分でもある程度はできるとはいえ、プロにやってもらうなら、それなりのリスペクトがあり、
それなりの対価を支払うのは当然。
半日かかる仕事をプロに頼んで、工賃が数千円っておかしい。
それなりのお金を払うのは当たり前。
しかし、良いバイク屋さんばかりではない。
ちゃんと整備もせずに適当なことを言ったりする人もいるだろうし、
ミスをしてバイクに傷をつけても黙っているような人もいるだろう。
昔のひどいバイク屋さんだと、事故歴を知っていながら言わないとか、メーターを戻すとか、そんな話も普通に聞いた。
とにかく、信用できるバイク屋さんを見つけることが大切で、
気持ち悪いくらいに愛想だけ良くて、外装だけ綺麗にして高く売りつけるようなバイク屋さんではダメ。
個人的には、とにかく説明をしっかりするかどうかが決め手ではないかと。
もちろん、説明を理解するには自分も勉強が必要だが。
乗り倒して、いじり倒して、バイクが好きだから、バイクのことを勉強して、
とにかくバイクに乗るのが面白くて、そんなバイク乗りが好きな人、
思いを共有できる人、
そんなバイク屋さんで、バイクを買いたいものだ。
そういうバイク屋さんには、工賃を倍払ってでも続けて欲しいと思う。